東京‐神田間の高架下にも
種々の飲食店が連なっているのが目に入る。
有楽町側高架下の飲食店街は有名で以前より知っていたが、
こちら側は新しい知見である。
デザインを凝らした都バス「夢の下町」号の
オリジナル車体が入って来る。
外装は銀色に光り輝き、窓枠は曲線で構成されている。
下町観光用のこの路線のみで使われる特別仕様だが、
運賃は二百円で、通常の都バスと変わらない。
車内には最前列と中央の二箇所の天井に
ガイド用のテレビモニターが設置されている。
最後列の窓際に陣取り、丸窓から車外を覗く。
この瀟洒な丸窓を通すと、
自己顕示の強い看板ばかりがゴミゴミして見苦しい東京の景観も
何だかとても美しく見える。
パンフレットは日本語、英語に加えて
中国語、朝鮮語のものが用意され、
車内放送もその四ヶ国語で行われる。
ガイジンも含めた、下町初心者への気配りである。
バスはすぐに高架下をくぐり、
八重洲北側を通って日本橋三越の方向へ進んで行く。
近代建築の中に和風の雰囲気がポツリポツリと残された街並み。
肝心の日本橋は、やはり首都高の高架に圧迫されて
見目良いものとは言い難いが、
その橋桁のモニュメントだけは
せめてもの意地を示すべく而立している。
パンフレットによると、秋葉原のバス停は、
歩行者天国を迂回するために平日と休日で異なるらしいのだが、
トラック野郎加藤がこの六月に敢行した特攻作戦以降は、
その配慮も無意味なものとなった。
上野からは、アメ横の入口が、
合羽橋付近では、下谷神社の大鳥居と道具街通りのゲートが、
浅草では雷門が車窓から見える。
東京下町の本文ではなく、
その目次の部分だけを手短に読み上げていく。
厩橋上で信号待ちをしている間に、隅田川の下流から
松本零士デザインの水上バス「ヒミコ」が遡上してくるのが見える。
そのSF風のフォルムを持った船体もやはり、
銀色に輝いている。
総武線の高架を成田エクスプレスが走っていく。
国技館前とJR両国西口を通って、
街外れの幹線道路沿いにある終点の、
都営地下鉄両国駅前に到着する。
大江戸線が通る下町の江戸っ子のくせに、
野暮ったく板になって喋りながらゆっくりと歩く高校の生徒達で
歩道は溢れている。
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