文選「海賦」より2(木華)

2017/04/13(木) 19:26:28 [漢詩漢文の勉強]

……巨鱗雲を挿し、鬐鬣天を刺す。頭の骨岳を成し、流るる膏淵を為す。



(鯨の死体の)巨大な鱗は雲に届き、ひれは天を刺し貫く。腐っていくと、山のような頭の骨が現れ、流れ出す膏は深い淵となる。

鯨の巨大さについて記述した一節。
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文選「海賦」より(木華)

2017/04/03(月) 00:16:05 [漢詩漢文の勉強]

将た世の収むる所の者は常に聞くも、未だ名づけざる所の者は無きが若し。且つ希世の聞く所、いずくんぞ其の名を審らかにせん。故に其の色を彷像し、その形を靉き(雲気)すべし。



一体、海から取り出された物については、良く知られているが、取り出されもせず、名もつけられていない物については、無数にあるにもかかわらず、存在しないかのようである。それに、めったに耳にできないような海の異物の名前など、どうしてはっきり定められようか。だから、そのような物については、その様子や形態を、あいまいに表現しておくしかないのである。

※無限に広大な世界のごく一部しか、人間の知性は把握することは出来ない。古代中国の知識人の、世界に対する謙虚さ。
この謙虚さは、宗教的なイデオロギー体系から演繹的に齎されたものではなく、現実の観察から経験的に得られたものであることに留意。→自然科学者にどこか近い。

文選「子虚賦」(司馬相如)より

2016/02/11(木) 00:22:15 [漢詩漢文の勉強]

水虫おどろきて、波鴻沸く。涌泉起きて、奔揚会す。礧石相撃ちて、硠硠礚礚として、雷霆の声の、数百里の外に聞こゆるがごとし。



水中の動物は驚き騒いで、大波を起こす。水は沸きかえって、波はぶつかり合い、水底の多くの石が触れ合ってゴロゴロと音をたて、数百里のかなたまで鳴り響く雷鳴のようである。

文選「甘泉の賦」(楊雄)より2

2016/02/09(火) 00:16:07 [漢詩漢文の勉強]

回猋はやくして其れ碭駭し、桂椒をひらきて栘楊を鬱む。



つむじ風がさっと吹き過ぎ、宮殿の周囲の桂や椒や栘や柳の木々を、おしわけては、寄せ集める。

※回猋の「猋」という字はカッコ良いなと思ったが、環境依存文字。
現代のリテラシー環境では、多用できないのではないか?

文選「甘泉の賦」(楊雄)より

2016/02/06(土) 21:12:38 [漢詩漢文の勉強]

椽欒(てんらん)に登りて天門にいたり、閶闔(しょうこう)に馳せて凌競(りょうきょう)に入る。



椽欒山に登って天の門に至り、天界に踏み入ると、寒さに震える場所である。

(「凌競」という言葉は初めて聞いた。その意味がイマイチ掴めないが、「寒さに震える」で良いのだろうか?)

『寒山詩』より6

2013/09/04(水) 07:22:35 [漢詩漢文の勉強]

余が家に一窟有り、
窟中に一物も無し。
清潔にして空しく堂堂たり。
光華日日に明らかなり。
疏食微体を養い、
布袋幻質を遮る。
さもあればあれ、千聖現るるとも、
我に天真仏あり。

『寒山詩』より5

2013/08/30(金) 11:03:14 [漢詩漢文の勉強]

寒山幽奇多し。
登る者皆常に懼る。
月照して水澄澄。
風吹きて草猟猟。
凋梅は雪を花と作し、
兀木は雲を葉に充つ。
雨に触れて轉鮮霊。
晴るるに非ざれば陟るべからず。

『寒山詩』より4

2013/08/29(木) 23:37:47 [漢詩漢文の勉強]

下愚は我が詩を読んで、
解せずしてかえって嗤いそしらん。
中庸は我が詩を読んで、
思量して云はん甚だ要なりと。
上賢は我が詩を読んで、
把着して満面に笑まん。
揚修は幼婦を見、
一覧してたちまち妙を知る。

『寒山詩』より3

2013/08/21(水) 00:26:54 [漢詩漢文の勉強]

天高うして高きこと窮らず。
地厚うして厚きこと極り無し。

『寒山詩』より2

2013/08/19(月) 23:53:06 [漢詩漢文の勉強]

独り重巌の下に臥す。
蒸雲晝消えず。
室中翁曖たりと雖も、
心裡喧囂を絶す。

頼山陽詩選より1

2013/03/04(月) 20:03:32 [漢詩漢文の勉強]

倒衣:衣服をさかさまに着ること。朝の身支度で慌てる様子を指す。

頼山陽「粟田にて戯れに作り、送行の諸子に示す」より

2013/02/25(月) 19:54:19 [漢詩漢文の勉強]

酒をとりて 旗亭 送る人に別る
禽声 草色 太平の春



禽声:鳥の鳴き声

頼山陽「読書八首」より

2013/02/22(金) 13:43:44 [漢詩漢文の勉強]

今にして勉めて齷齪するは
すなわち君父を欺くこと無からんや



齷齪:あくさく。こせこせすること。あくせくすること。

頼山陽「華臍魚を食ふ歌」

2013/02/18(月) 14:56:35 [漢詩漢文の勉強]

魚有り 魚有り 華臍と名づく
美なる哉 其の名 誰の題する所ぞ
蟹団 麝香 誇り得ず
味は圧す 玉膾と金韲と
京城 天寒くして 価は璧の如く
故人 雋を獲てザン客を会す
爐は紅に 鼎は沸きて 塩豉を下し
銀板新たに堆し 臘雪の白
雪片 鼎に堕ちて揺らぎ未だ消えざるに
すみやかに嚼めば 歯間 瓊液鳴る
肝は黄酥の如く 膚は紫菌
遍体 華腴 名の允なるを知る
聞く 汝は口をあけて食の来るを待つと
憐れむ可し 翻りて我が脣吻に到るを
葱を切り 橙をさきて 精神を助け
頓に覚ゆ 四肢に春温を回らすを
咲ふ 他の世人の河豚を嗜むを
脆美 真を乱すこと郷原の如し
嗚呼 汝 豈に渠と陰狠を同じうせんや
外は醜獰と雖も内は純融
口に蜜あり 腹に剣あるは李林甫
何如ぞ 吾が嫵媚たる魏鄭公を見るに



華臍魚:アンコウのこと
蟹団:蟹とすっぽん。美味いもの例え。
黄酥:クリーム
紫菌:紫のキノコ(きくらげ?)
遍体華腴:全体が美味で豊かである。

アンコウの旨さを延々と称賛する頼山陽の漢詩。
山陽はアンコウとフグを比較して、アンコウに軍配を挙げている。
この時代から、鍋の薬味に柑橘類を使っていることが、
「橙をさきて~」のセンテンスからわかる。

頼山陽「疾あり」より

2013/02/15(金) 15:36:13 [漢詩漢文の勉強]


……
著書 鹵莽多し
誰か肯えて吾を助け成さん


鹵莽:ろもう。粗雑なこと。

頼山陽「~吾は安土公を得たり」

2013/02/13(水) 13:40:04 [漢詩漢文の勉強]

艱危 寧んぞ料らんや 狐 尾を濡らさんとは
顚躓 誰か悲しむ 狼 胡を跋むを
七道の荊榛 鋤きて未だ了らず
一半を留めもって家奴に伏す



艱危:かんき。危難
狐が尾を濡らす:事が成就しようとして難に遭う。
狼が胡を跋む:身から出たさびで危険に遭う。
荊秦:雑草と雑木。荒れ果てたさまや、邪魔なものの例え。

頼山陽「所見」

2013/02/08(金) 21:31:05 [漢詩漢文の勉強]

薩南の村女 可憐生
竹策芒鞋 暁晴をおう
果下の薪を載するは皆な牝馬
一人能く数駄を領して行く



果下:果樹の下を歩けるような背丈の低い馬。

頼山陽「長崎の謡十解 その一」

2013/02/05(火) 22:03:15 [漢詩漢文の勉強]

火海の松魚 始めて街に上り
火雲 稍や乱峰の堆きをなす
連朝 坤井 風方に熟す
等しく待つ 洋船の港に入り来るを



松魚はカツオ。
初カツオが出回る初夏は、長崎においてはまた
オランダ船が入港する季節でもある。
青空に入道雲が伸びゆく港町の夏の風景。

頼山陽「~鯨肉の供する有り」

2013/02/01(金) 21:39:14 [漢詩漢文の勉強]

巨鬣 潮をあげて雪花を噴き
万夫 矛をあつめて海門かまびすし
肥海 鯨を捕ること 耳曾つて熟す
何ぞはからん 鮮肉 歯牙に到らんとは
片片たる肪玉 芳脆を截る
金虀玉膾 曷ぞ能く加へん
他日食らふ所は真味に非ず
塩蔵 況や運路の遐き経るをや
君見ずや 先候の戈せん 豕蛇を殪せしは
此者 セビレをおさめて鉄叉に上がりしがごときを
多士方に遭う 偃武の日
取りて文酒をすすめて柔嘉を愛す
……



佐賀を訪れた山陽が、獲れたての鯨肉を食した時に詠んだ長詩。
鯨の美味を讃える美辞麗句が延々と続く。

頼山陽「倦繍詞」より

2013/01/27(日) 20:36:04 [漢詩漢文の勉強]

残絨 窓に唾すれば窓は漸く暗し
羅衣 春痩せて晩寒を怯る



春痩:春になって春の愁いのために痩せること

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『乃木将軍詩歌集』より20

2012/05/28(月) 16:43:39 [漢詩漢文の勉強]

皇師百万強虜を征す
野戦攻城屍山をなす
愧ず我何の顔あってか父老にまみえん
凱歌今日幾人か還る



乃木三絶の一

『乃木将軍詩歌集』より20

2012/05/22(火) 21:49:08 [漢詩漢文の勉強]

渓水潺潺樹色孳し
夏山層翠白雲迷う
長征踏破す永陵の路
馬上杯をとれば杜宇啼く



夏山層翠:青山が重なりあっていること。

『乃木将軍詩歌集』より19

2012/05/17(木) 21:14:34 [漢詩漢文の勉強]

爾霊山の険豈攀じ難からんや
男子功名克艱を期す
鉄血山を覆いて山形改まる
万人斉しく仰ぐ爾霊山



乃木三絶の二
二〇三高地の攻撃では、乃木の次男も戦死しているという。

『乃木将軍詩歌集』より18

2012/05/14(月) 17:10:17 [漢詩漢文の勉強]

山川草木転荒涼
十里風腥し新戦場
征馬前まず人語らず
金州城外斜陽に立つ



明治三十九年六月七日。
長男乃木勝典が戦死した戦場付近を弔った日の日記に書かれたもの。
乃木三絶の一つ。

『乃木将軍詩歌集』より17

2012/05/07(月) 21:53:05 [漢詩漢文の勉強]

雨中進撃行軍演習を想い病中戯墨す

満天の風雨人馬を漂わす
士気猛然として潮流の如し
戦友相看て一語無し
那辺の好敵幾残留

『乃木将軍詩歌集』より16

2012/05/04(金) 00:54:42 [漢詩漢文の勉強]

戈影陸離として雪と映ゆ
茄声嚠喨風を帯びて鳴る
為に問う深院暖炉の底
紙上滔々坐して兵を説く



陸離:光がまばゆく美しく輝くさま
茄声:ラッパの音
嚠喨:冴えわたってよく響くさま(漱石も多用した語句)
(明治26年)

『乃木将軍詩歌集』より15

2012/05/02(水) 17:16:00 [漢詩漢文の勉強]

山中村の演陣

旭旗雪に映じて暁風寒し
雷銃天に轟きて争戦闌なり
玉女の山霊意有るが如く
孱顔半ば白雲を掩うて看る



孱顔:山の高く険しいさま。
(明治12年)

『乃木将軍詩歌集』より14

2012/05/01(火) 23:14:36 [漢詩漢文の勉強]

(岩殿古墟に登る)

問わんと欲す当年遺恨の長きを
英雄前後幾興亡
巉巌千尺荒墟の上
剣によって悵然夕陽を見る



巉巌:高く聳え立つ
悵然:うらみ嘆くこと

『乃木将軍詩歌集』より13

2012/04/25(水) 22:29:00 [漢詩漢文の勉強]

身延山に登る

孤剣窮めんと欲す兵要の地
凄風雨を帯び山に入りて深し
忽ち見る巨刹嶮に依りて聳ゆ
仏意天然是我が心

『乃木将軍詩歌集』より12

2012/04/24(火) 21:22:27 [漢詩漢文の勉強]

御坂峠(一)

錦雲路を埋む幾千重
半日攀じ登る十二峯
初めて山頂に到り前岳を拝し
一声同じく賞す玉芙蓉



玉芙蓉:富士山のこと
(明治十二年)

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