『塚本邦雄歌集』より14

2016/02/08(月) 23:32:20 [塚本関連]

ディヌ・リパッティ紺靑の樂句斷つ 死ははじめ空閒のさざなみ

※ディヌ・リパッティ:ルーマニア生まれの夭折のピアニスト。ショパンの演奏で著名。
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『塚本邦雄歌集』より13

2016/02/06(土) 21:17:39 [塚本関連]

こころざしくづれて廿歳雪の上を群靑の風過ぎし痕あり

『塚本邦雄歌集』より12

2015/11/19(木) 15:22:52 [塚本関連]

忍法夙流変位抜刀霞斬り
眼疾のはてにわが死はあらむ


※「変位抜刀霞斬り」は『カムイ伝』の主人公カムイの必殺技の1。
マンガや劇画から固有名詞を引っ張って来る前衛歌人らしい先進性、柔軟さ。

下の句「眼疾のはてに~」との接続をどのように考えるかが難しい。
というより、良くわからない。
マンガを含む書物に埋もれる自身への自己言及ととるべきか?

『塚本邦雄歌集』より11

2015/10/20(火) 21:14:16 [塚本関連]

錐・蠍・旱・雁・掏摸・檻・囮・森・橇・二人・鎖・百合・塵

『塚本邦雄歌集』より10

2015/10/15(木) 11:49:25 [塚本関連]

つね戀するはそらなる月とあげひばり

ひとでなし
一節切

(※ 改行は引用者。何だかこのように表記してみたくなる一首。
一節切は、小さな横笛の尺八みたいな和楽器。)

『塚本邦雄歌集』より9

2015/09/27(日) 00:12:12 [塚本関連]

五月来る硝子のかなた森閑と嬰児みなころされたるみどり

『塚本邦雄歌集』より8

2015/09/17(木) 03:13:30 [塚本関連]

愛人の愛遲遲として群青の沓下をその底より編めり

『塚本邦雄歌集』より7

2015/08/24(月) 20:38:06 [塚本関連]

靑葉影わが家を占めてみなごろしの唄うたふ妹のほととぎす

詩と死ひとしきわが領域に夏さりて木曜の森火曜の竈

快楽の口煤色に開きねむる汝こそわが夏の深淵

『塚本邦雄歌集』より6

2015/08/23(日) 14:47:56 [塚本関連]

冬の河口 乏しき水が泡立ちて落つる日本の外へ必死に

赤き菊の荷夜明けの市にほどかるる今、死に瀕しゐむハンガリア

(※ハンガリー動乱 同時代の時事ネタ、国際ニュースが反映されている)

『塚本邦雄歌集』より5

2015/08/20(木) 23:24:44 [塚本関連]

出埃及記讀みつつあさき眠りせしいま燦燦と枯るる野に出づ

ひらかむとする百合を束ねて昧爽の高壓線の真下過ぎたり

『塚本邦男歌集』(思潮社版)より4

2015/08/02(日) 22:42:55 [塚本関連]

春ゆふべ給水塔に水満たすひびきあり舊き祈祷書のごとく

『塚本邦男歌集』(思潮社版)より3

2015/08/01(土) 23:07:09 [塚本関連]

身を守るための黙(もだ)のみ干柿の種子透明の果肉をまとふ

『塚本邦男歌集』(思潮社版)より2

2015/07/30(木) 18:27:40 [塚本関連]

生きのびて癡か(おろか)に暑し火喰鳥蒼然として羽抜けかわる

『塚本邦雄歌集』(思潮社版)より1

2015/06/13(土) 12:40:08 [塚本関連]

候鳥の影おとしゆく断崖(きりぎし)に一日對へりき何も無かりき

新しきファラオの過去の妃らが狙ふみづうみばかりの領地





塚本『百句燦燦』より12

2010/12/20(月) 22:14:51 [塚本関連]

夜の驕り極まる抜歯窩の冬至(馬場駿吉・文中)

塚本『百句燦燦』より11

2010/12/19(日) 22:28:57 [塚本関連]

眼に古典紺紺と降る牡丹雪 (富澤赤黄男)

塚本『百句燦燦』より10

2010/12/18(土) 22:45:29 [塚本関連]

尾を持たぬさびしさに秋立ちにけり (三谷昭・文中)

塚本『百句燦燦』より9

2010/12/17(金) 22:19:24 [塚本関連]

蜆蝶とまるにはどの石も不安 (加倉井秋を・文中)

塚本『百句燦燦』より8

2010/12/16(木) 22:40:59 [塚本関連]

斜めに町を抜けて男妾より惨め (楠本憲吉・文中)

塚本『百句燦燦』より7

2010/12/15(水) 22:34:45 [塚本関連]

白菊とわれ月光の底に冷ゆ

やはらかき身を月光の中に容れ

月の中透きとほる身をもたずして

風癒えず月蒼き夜のつづきたり

月光の宙に出で行き遊びけり

月明るき夜の翌くる日の木の葉髪 (桂信子・文中)

塚本『百句燦燦』より7

2010/12/14(火) 22:41:30 [塚本関連]

夕月細るその極限の罪を負う (林田紀音夫・文中)

塚本『百句燦燦』6

2010/12/13(月) 22:02:14 [塚本関連]

むらさきになりゆく墓に詣るのみ (中村草田男)

塚本『百句燦燦』より5

2010/12/12(日) 22:38:53 [塚本関連]

いま
俺を
優しく殺す

雪の樅
(若山幸央)



塚本の評言
 高柳重信が夥しく創った弟の一人として私は幸央を示した。彼は弟を次々と殺しまた陸続と生みつつある。少なくとも多行形式で書く俊足たちは弟に数えられる栄光と恥辱を辱うせねばならぬ。

塚本『百句燦燦』4

2010/12/11(土) 22:08:54 [塚本関連]

金魚大鱗夕焼の空の如きあり (松本たかし)



以下、塚本の評言(抜粋)
「大鱗」なる秀抜な創作詩語は「ごときあり」によって初めて鋭く響きあふ。

不安を押えつつ冷然とたたずむその切迫した息づかひは初七体言止、中七座五切目なしのアレグロ調の詠み下しにもあらはである。しかも一句のたたずまひは一糸乱れず、端正流麗を極めている。

句意は単純である。情景は平凡である。だが発作的とも言えるこの表現技法は、作者たかしの精神の危機を暗示するまでに昂揚した。

塚本『百句燦燦』3

2010/12/09(木) 22:04:07 [塚本関連]

氷片をタオルにつつみうしなえる (金子明彦・文中)



以下、塚本の評言を抜粋。

……作品のどこかに目に見えぬ裂目があり、彼の訴へはそこからするりと脱落する。残った詞は脱穀のように軽く、ノンセンスに近い。ただあるかないかの脱落の痕跡は、脱落以前の幻の原型以上に悲痛なのだ。

……この欠落の部分には明彦のほろ苦い何分間か何時間かがある。彼は含羞と哀惜に堪えずそれを削除して「つつみうしなへる」と透明縫合を試みた。そこに寂しい諧謔が漂う。



以下、青条のコメント

 この句の意味内容自体は、読んで字の如くとりたてて難解なものではない。むしろ「だからどうした」と言いたくなるほどの平明さに終始している。にもかかわらず、前後の文脈から切断されている(まさにその断絶性こそが俳句という詩表現の特質であるが)ゆえに、孤立した空虚感とそれゆえに深く残る余韻がこの一句には存在している。

 定型で書かれた自由律俳句のような趣がある。

塚本『百句燦燦』2

2010/12/08(水) 22:11:49 [塚本関連]

向日葵の見張る旱を彷徨す (野沢節子・文中)

塚本邦雄『百句燦燦』より1

2010/12/06(月) 22:16:00 [塚本関連]

金雀枝(えにしだ)や基督に抱かると思へ (石田波郷)



金雀枝(えにしだ)はスペイン語イニエスタから来たもの

塚本『王朝百首』99

2010/10/14(木) 00:41:30 [塚本関連]

儚くてこよひ明けなば行く年の思ひ出もなき春にや逢はなむ (源実朝)

年のうちに春が立つとか
薄闇の中に目を瞠けば
後退りしながら来る春が見える
何して一年を生きたか
何ゆえに明日があるのか
想い出も期待も
〈……なきが儚さ〉
見えるのはただ
腥い時間と冷ややかな空間
梅がひらくとて咳入り
水が温むとて川の辺にくるめく
死は近くて遠いうつつ
罰はいつ畢るのか

塚本『王朝百首』97

2010/10/11(月) 23:40:21 [塚本関連]

ふるままに跡絶えぬれば鈴鹿山雪こそ関のとざしなりけれ (藤原良通)

ゆきくれて
鈴鹿は鈴の音絶えて
かなしみをさへぎる関の扉
ここ過ぎて
わが後を人は知らず
弟よ逢ふなら黄泉の雪の道

塚本『王朝百首』93

2010/10/11(月) 01:56:50 [塚本関連]

思ひ出でよたがかねごとの末ならむ昨日の雲のあとの山風(藤原家隆)


では
きみの
あの日の
約束もみな
夢もうつつか
絶えてつれなき
つれないのはきみ
忘れたとは言はさぬ
忘れたと言ひたければ
あの雲の異様な赤ささへ
明日は名残も止めぬ理由を
私に向って昂然と説明なさい
たれがこの心に消しがたい傷を
彫りつけたのか今一度考へて御覧



これも塚本の詞が秀逸。素晴らしい。

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