巻第八 一五七〇

2010/05/31(月) 02:59:44 [短歌]

藤原朝臣八束が歌二首

ここにありて春日やいづち雨障み出でて行かねば恋いつつぞ居る


雨障み:あまつつみ。雨に妨げられて家に籠ること
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「さくらや」が散る春に

2010/05/30(日) 01:23:38 [【09-10】ちぃばす麻布ルート]

 新大久保駅を発車した山手線内回り電車の、東側の車窓から進行方向を眺めると、途中まで併走している西武新宿線と、その終着駅西武新宿と直結している新宿プリンスホテルが見える。プリンスホテルの妙に薄っぺらくて平べったい横顔の左側にあったNTTドコモビルが、列車の接近に伴って一度その裏に姿を消し、そして右側から再び現れる。その間に我々を載せた電車は右手にかなり広い保線用の資材置き場を見降ろしつつ高い所を走るようになり、東京の西の郊外からやって来た中央線が足下をくぐってやがて合流する。
 この十年ぐらいの間、全く同じ形式をもって繰り返されてきた新大久保新宿間のパノラマが見せる一連のスタンツに、奇妙な新参者がこの春現れた。靖国通りを挟んだ西武新宿ペペの向かい側、元々は富士銀行があった場所に現れた、くっきりと半円形にカーブしたファサードに大型ビジョンを掲げたあの白い建物には一体何が入るのだろう?

 春にしてさくらやは散り、姿を消した。他の駅前繁華街、主要地方都市においては、百貨店の苦境が伝えられる。そんな季節にこの街に新しくやって来るのは、ユニクロいわゆるファストファッションと、新しい家電量販店だ。郊外的・地方的なビジネスモデルの都心中央商業地への侵略いや進出が、日本列島全土で行われているのだ。



 郊外という腐海に沈んでいく中枢商業地。
 郊外という周縁を吸収しつつ活性化する「中心」。
 郊外というハートランド(内陸勢力)に併呑されるリムランド(沿岸勢力)。

 ……地政学の用語や、文化人類学の枠組や、アニメ由来のレトリックを使って、目下観察されるこの現況を、戯れに表現してみる。
 所詮は戯れにしか、過ぎない気がする。
 何をどう言ってみても、この現実は変わらないし、また変える必然性も僕は特に感じない。なんとなれば、そのような街の在り方は、多数の人々の欲望する所であり、利にさとい商人がそのリクエストに誠実に応えようとした帰結として、今、我々の眼前にあるのだから。
 (それにこれらの理論は皆、意味するところは結局同じなのではないか? 「ハートランド」はロシアやソ連や中央アジア、周縁というのは西欧(オクシデント)から見て異質なスラブやオリエントやその他アジアの文化、風の谷のナウシカの腐海のモデルももちろんロシアやソ連で、トルメキアはナポレオン帝国かナチスドイツ、ナウシカ自身は旧ユーゴスラビアのどこかの出身だ。)



 半円にカーブした外観を持つ、西武新宿駅前の新しいビル、すなわちヤマダ電機新宿LABI店に、一階の入り口から入ってみる。新規出店の勢いもあって、やはり多くの人々で賑わっている。個々のフロアのレイアウト自体は、他の家電量販店と比較してとりたてて異なった所は無いように思える。
 平積みになっている目玉商品の段ボールには、他業者による大量購入は断る旨の注意書きが貼られている。
 最上階はゲーム機とゲームソフトのフロアになっていて、WiiとPS3のソフトを遊べるコーナーも設けられている。Wiiで遊べるのはニュースーパーマリオブラザーズ、若い夫婦が小さな子供もほったらかして夢中になっている。PS3では、時代劇風味の格闘ゲームらしき物を、中年の女性二人組がプレイしている。操作には習熟している様子で、やけに上手い。何のゲームかと聞いてみたら、戦国無双の幾つかだと答える。
 女性客を意識して、地下階は化粧品や雑貨などを中心に売るエリアとなっている。このフロアはまた、プリンスホテル側の地下街、サブナードと繋がっており、人はそこから出ることが出来る。

巻第八 一五一五

2010/05/29(土) 23:46:18 [万葉集の勉強]

但馬皇女の御歌一首

言繁き里に住まずは今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを

【お知らせ】下北沢の書店「フィクショネス」に著書を置いて貰いました

2010/05/29(土) 01:25:15 [お知らせ・近況報告]

東京・下北沢の書店「フィクショネス」に著作『雑司ヶ谷下水道水難事件』を置いてもらいました。
フィクショネスさんのサイトはこちらです。
↓↓↓
http://www.ficciones.jp/

これからも、販売経路を多様化すべく、色々と工夫をしていきたいと思います。
新しい動きがありましたら、その都度、このブログ上でお伝えしていきます。
情報を提供して下さる方を歓迎します。ブログのコメント欄、メールなど、どんな方法でも結構です。

巻第七 一四〇一

2010/05/28(金) 23:26:13 [短歌]

水霧らう沖つ小島に風をいたみ舟寄せかねつ心は思えど


水霧らう:水煙で霞んでいる

薫風の涯て

2010/05/28(金) 03:34:10 [【09-10】ちぃばす麻布ルート]

薫風の涯てなるところ青天のきざはしに乾く藤の枯れ花

巻第七 一二五八

2010/05/28(金) 01:38:59 [万葉集の勉強]

黙あらじと言のなぐさに言ふことを聞き知れらくは悪しくはありけり



黙っていてはまずかろうと相手が口先だけの気休めに言う言葉であるのに、そうと知りながら聞いているのは何とも気持ちの悪いものだ

メトロポリスのドットイート

2010/05/26(水) 03:43:51 [詩文・俳文]

商業施設とか遊戯施設とか美術館とか駅とかを巡って、
人々はこの街を常に忙しく移動し続けている。
無数のプレイヤーによって、
終わることのないドットイートが常に演じられている。

(注:「ドットイート」はコンピューターゲームのジャンルの一。
画面に設置された点、ドットを収集することによってクリアの条件とする。
パックマン』が最も良く知られたその典型にして最高傑作。)

(注:しかし、これは何と平板で退屈な比喩だろう。
「水族館の大型水槽をグルグルと回り続けるマグロ」と言うよりは
まだマシと言う程度に過ぎない。)

(注:この詩の構想を練っている間に、その生誕30年を記念して、
グーグルのロゴが何故か『パックマン』になっている。)

(注:松田聖子も今年デビュー30周年だそうだ。)

もちろん、僕もその無数のプレイヤーのうちの一人に過ぎない。
そのことに、特に不満を感じているわけではない。

このフィールドにおいては、ドットは常に増殖し続け、更新され続ける。
そのことを、むしろ愉快に感じている。

ではあるが、ある時、あるタイミングでふと思ったのである。
誰かが仕掛けたドットを集めるばかりではなく、
いささかなりとも新しい何かをこの街に設置する側になりたいと。
路上で詩集を売る詩人が、こうして一人誕生した。
インクの点の集積物として紙の上に現れた僕の言葉達が、
この街を歩く誰かにとって、収集すべきドットとしてありますように。

巻第七 一二三一

2010/05/24(月) 01:36:00 [万葉集の勉強]

天霧らひひかた吹くらし水茎の岡の港に波立ちわたる



天霧らう:空がかき曇る

【オープンマイク】吉読Vol.3に行ってきました

2010/05/22(土) 23:39:12 [お知らせ・近況報告]

前回に引き続き、オープンマイクイベント「吉読」に参加してきました。
5月16日日曜日午後6時より、会場は吉祥寺、
五日市街道沿いのマンションの2階、鉄塔の見える喫茶店「ダーチャ」です。

吉読Vol.3のプログラムはこちらです。
↓↓↓
http://blog.goo.ne.jp/kichidoku/e/2386f342444347602a5622d0202532ee
私は今回も自著『雑司ヶ谷下水道水難事件』より「地宙船」「Orangesubway」を選んで朗読しました。
前回より、少しは上手くなった……かな?
主催・運営の守山ダダマさん、ヒエさん、また私の拙いパフォーマンスを聞いて下さった全ての方に、改めてお礼を申し上げます。

巻第七 一一二〇

2010/05/21(金) 23:37:54 [万葉集の勉強]

こけを詠む

み吉野の青根が峰の蘿むしろ誰か織りけむたてぬきなしに



「み吉野の青根が岳のこけの莚は、いったい誰が織り上げたのであろう。縦糸や横糸もなしに」

苔の緑の美しさを率直に歌ったもの。そう言えば、以前、ある日本庭園で外人が盛んに「モス!モス!」と叫んで苔の美しさを称賛していたのを見かけたことがある。

初夏の貨物列車

2010/05/21(金) 01:05:52 [【09-10】ちぃばす麻布ルート]

初夏の鉄。
自ら放った陽炎をまたかきわけてコンテナが来る

巻第七 一〇八九

2010/05/20(木) 23:36:12 [万葉集の勉強]

大海に島もあらなくに海原のたゆたふ波に立てる白雲

右の一首は、伊勢のおおみともの作

メトロの媚態

2010/05/20(木) 02:20:38 [短歌]

ことさらに「原宿」の名を追記して女のガキに媚び諂って



神宮の誇りも帝都の冠もたやすく投げ出すメトロの軽薄

巻第七 一〇七九 一〇八二

2010/05/19(水) 23:50:50 [万葉集の勉強]

まそ鏡照るべき月をしろたへの雲か隠せる天つ霧かも

水底の玉さへさやに見つべくも照る月夜かも夜の更けゆけば

空腹と睡眠

2010/05/19(水) 03:26:41 [【09-10】ちぃばす麻布ルート]

空腹でも詩は書けるが、
寝不足では断じて書けない。

巻第七 一〇七五

2010/05/19(水) 01:01:08 [万葉集の勉強]

海原の道遠みかも月読の光少なき夜は更けにつつ



月読:月の神格化。お月さま。

木下坂を陛下が通る

2010/05/18(火) 00:36:55 [短歌]

連休の最後の日まで仕事する
巡査と
僕と
天皇陛下



歓声と
女子高生とに
迎えられ木下坂を陛下が通る



 夕刻の有栖川公園一帯に大警備網が敷かれている。この辺は大使館が多いので、誰か外国の要人でも通るのかと思って制服警官に聞くと、さにあらず、なんと、天皇陛下が通られるとのことだった。
 警察機関が特別に調整しているのか、車道の信号はさっきからずっと青のままだ。沿道に並んだ見物人の一人となってしばらく待っていると、先導の白バイがまずやってくる。次いでSPと思われるスーツ姿の男性が大勢乗り込んだ黒塗りの車が走り来る。そしていよいよ天皇皇后両陛下を載せた車が姿を見せると、新緑の街に歓声があがる。私が立っていた歩道の側には、美智子様がお顔を見せ手を振られる。天皇陛下は僅かしか見えない。
 陛下が通り過ぎた後も、少しの間人々はその場に留まったいたが、坂の上から何でもない様子で都バスが降りて来たのを解散の合図のようにして、それぞれに再び歩き始めた。五月の街はまだまだ明るい。

巻第七 一〇六八

2010/05/17(月) 23:22:41 [万葉集の勉強]

天を詠む

天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ

右の一首は、柿本朝臣人麻呂が歌集に出づ。



ファンタジックな世界観で統一され、明晰な比喩によって貫かれた一首。
何だか現代的なものを感じさせる。

【2ちゃんねる】「在る」ことと「成る」こと

2010/05/17(月) 01:44:55 [引用▼日本]

211 :無名草子さん:2010/04/19(月) 13:49:25
あなたが 在る ではなくて
あなたが 成る を目指してるかぎり
扉は開かれないだろうね。
詩の内容ではなく、あなた自身の生き方の問題。
在る というのは世間も常識も、もちろん賞も一切関係ない。
ところが、在る を選択したとたんに
一切が 自分自身にあつまってくるのさ。
そのとき、望みは嘘のようにやすやすと叶う。

在るのは勇気をともなうから、まぁ難しかろうね。
才能とかいうのは、それができるかどうかだけ。



2ちゃんねるの以下のスレッドより。
久しぶりに、ネット上で心に響く言葉を見つけた。

http://love6.2ch.net/test/read.cgi/books/1268729245/211

巻第六 一〇二八

2010/05/17(月) 01:19:25 [万葉集の勉強]

十一年己卯に、天皇、高円の野に遊猟したまふ時に、小さき獣都の中に泄走す。ここにたまさかに勇士に逢ひ、生きながらにしてとらえぬ。すなはち、この獣をもちていまし所に献上るに副ふる歌一首

ますらをの高円山にせめたれば里に下り来るむざざびぞこれ

右の一首は、大伴坂上郎女作る。ただし、いまだ奏を経ずして小さき獣死ぬ。これによりて歌をたてまつることやむ。



都市空間に迷い込んだ野生動物の数奇な運命。現在の我々がタヌキやハクビシンやアザラシなどを珍しがって見る時と似たような感性が、案外このような時代からあったのかも知れない。

詐欺師の休日

2010/05/16(日) 01:29:59 [短歌]

連休は迷惑メールも少なくて
休むな!
こっちは今日も仕事だ!



日本のどこかで詐欺師もゴロ寝する電波の向こうも黄金週間

巻第六 一〇一八

2010/05/15(土) 23:19:55 [万葉集の勉強]

十年戊寅に、元興寺の僧が自ら嘆く歌一首

白玉は人に知らえず知らずともよし 知らずとも我れし知れらば知らずともよし

右の一首は、或は「元興寺の僧、独覚にして多智なり。未だ顕聞あらねば、衆諸あなどる。これによりて、僧この歌を作り、自ら身の才を嘆く」といふ。

閉店

2010/05/15(土) 01:31:14 [短歌]

初夏の夜のお別れパーティーどこ見ても見たことがない美人ばかりで



今日からは五月明日から広尾から僕の詩集の居場所無くなる

巻第五 俗道の仮合即離し、……

2010/05/14(金) 23:47:56 [万葉集の勉強]

俗道の仮合即離し、去りやすく留みかたきことを悲歎しぶる詩一首

……ただし、世に恒質なし、このゆえに陵谷も更変す。人に定期なし、このゆえに寿夭もひとしからず。撃目の間に、百齢すでに尽く、申臂のあいだに、千代も空し。あしたには席上の主となり、夕には泉下の客となる。白馬走り来るとも、黄泉にはいかにしかむ。
 隴上の青松は、空しく信剣をかく、野中の白楊は、ただに非風に吹かゆるのみ。ここに知りぬ、世俗にはもとより隠遁の室なく、原野にはただ長夜の台のみありといふことを。
……
内教には「黒闇の後方より来むことをねがはずは、徳天の先に至るを入るることなかれ」といふ。故に知りぬ、生るればかならず死ありといふことを。死をももしねがわずば、生まれぬにしかず。いはむや、たとひ始終の恒数を覚るとも、何ぞ存亡の大悟を慮らむ。

俗道の変化は撃目のごとし、
人事の経紀は申臂のごとし。
空しく浮雲と太虚を行き、
心力ともに尽きて寄るところなし。



撃目:瞬きの間
申臂:ひじを延ばす間。
黒闇:黒闇天女・不幸・死の象徴。
徳天:黒闇天女の姉。幸福・生の象徴。

ツイッター

2010/05/14(金) 01:31:19 [短歌]

とりあえず自分に必死で人様の呟きとかを見る暇が無い

巻第五 八三〇-八三三

2010/05/13(木) 23:30:09 [万葉集の勉強]

万代に年はきふとも梅の花絶ゆることなく咲きわたるべし

春なればうべも咲きたる梅の花君を思ふとよいも寝なくに

梅の花折りてかざせる諸人は今日の間は楽しくあるべし

年のはに春の来たらばかくしこそ梅をかざして楽しく飲まめ



梅の花の美しさと酒宴の楽しみを率直に歌った作品群(の一部)。以下も続く。
現代の私達にとって花見と言えば桜のことだが、万葉人にとってはまずもって梅だったのだろう。
短歌として、詩作品としてそれほど素晴らしいわけではないが、素直な歌いぶりに好感を覚える。

コロッケそば

2010/05/13(木) 01:53:04 [短歌]

蕎麦汁にコロッケ浸しおり
七味
五月の連休今日も出勤

巻第五 八〇四-八〇五

2010/05/12(水) 23:21:33 [万葉集の勉強]


(山上憶良)
世の中の すべなきものは 年月は 流るるごとし とり続き 追ひ来るものは 百種に せめ寄り来る……

反歌
常盤なすかくしもがもと思へども世のことなれば留みかねつも

おかしのまちおかが現れた

2010/05/12(水) 01:22:48 [詩文・俳文]

広尾商店街に「おかしのまちおか」という菓子屋が現れた。
特別なものがあるわけではない。コンビニやスーパーなどでも売っている
普通の菓子をやや安く売っている。
職場の女性陣に聞いてみると、首都圏郊外の各地では、
それなりに見かける店のようである。
これだけでは都心商業地の郊外化の現れとまで断定することは出来ないが、
少なくともこの商店街では競争原理が機能していて、
撤退と新規参入が常に行われていることは確かのようである。

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