カール・サンドバーグ「シャボン玉」

2012/03/30(金) 14:59:36 [引用▼海外]

ふたつのシャボン玉がたがいの球面に虹を見つけた。
そしておたがいこう言いながら消えていった。
「虹を30秒つかめただけでもシャボン玉に生まれてきた甲斐があったね。」



以下の本よりの再引用。

アメリカのライト・ヴァースアメリカのライト・ヴァース
(2010/02/01)
西原 克政

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著者の英文学者・西原氏の評言。

……ここにはライト・ヴァースのいろんな要素が凝縮されていて、アメリカのライト・ヴァースというと、まずこの作品が心に思い浮かぶ。いくつか特徴を挙げてみると、「簡潔な文体」「軽やかさ」「適切な詩の長さ」等ということになろう。なかでも、とりわけ「軽やかさ」を言いかえれば、「揮発性」ということに逢着する。皮膚にさっと触れて、一陣の涼風を感じさせたかと思うと、あっという間にいなくなってしまう消毒用アルコールの感触に似ている。上記の詩では「揮発性」の比喩を拡大解釈すれば、まさにシャボン玉はライト・ヴァース詩論の詩の「はかなさ」を表象する格好の題材であるといえる。(同書p13.)

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横浜の川

2012/03/28(水) 22:16:15 [短歌]

こんなにも空だけでなく横浜の川はどうして汚いのだろう

「窪田空穂歌集」より16

2012/03/28(水) 17:47:19 [引用▼日本]

目白台北の傾斜の雑司ヶ谷細き路地ありその奥に住む

尽未来際といふ語あり現在に生くる人間の久しも

二十三の北条時宗「莫妄想」と一喝せられて大事定まりぬ

純白の円き花びら群れはなれ落ちゆくさまの静かさを見よ

のがれゆく冬の袖よりほろほろこぼる。ほろほろと白くこぼるる。雪のこぼるる。



尽未来際:仏教用語。未来の果ての尽きるまで。未来永劫。
莫妄想:仏教用語。禅語。虚妄の観念にとらわれるなかれ。(ここで言う「妄想」は現代の意味とは異なる)

広瀬香美

2012/03/28(水) 07:42:12 [短歌]

執拗に同意を求める冬なのに暑苦しいと思いませぇんかぁぁ?

「窪田空穂歌集」より15

2012/03/26(月) 21:51:18 [引用▼日本]

日本人捕虜の墓

一穴に五遺体を埋め番号を記して墓とす犬猫ならぬを

敗戦の敵意を我に宣しては捕虜を殺せるソ連とは何ぞ

子が遺骨その国の土と化しゆくをソ連にいだく怒りは解けず

兵として死ねる子が墓なくもがなイルクーツクにありて悲しき

イルクーツクに子が墓ありと聞きし時見んとおもひき諦めぬ今は

国領のジョナサンの窓際にて

2012/03/26(月) 17:48:55 [【11-12】夏と愛と]

 自身がバスの乗客である時には、踏切ほどうっとおしいものは無いが、景色として上方から眺める側になるとこれが中々面白い。国領駅南側のジョナサンの、西側を向いた大きな窓からは、駅前のロータリーを出入りするタクシーとともに、大きなカーブを曲がりながら調布方向から走り来る京王線の様子が良く見える。各停以外の編成は国領には停車しないので、多くの列車はスピードを余り緩めずに駆け抜けるのだが、それでも踏切が閉まるたびに滞留していた種々様々な自動車の列が、開くと先頭から順に動きだし、しばらく時間が経過するとまた閉じて溜まるその繰り返しには箱庭観察的な愉快さがある。見ていて飽きない。
 ただ、京王線を走る車両はバリエーションがさほど多くない。特急車両の姿も平凡で、他とほとんど同じ形状をしている。華やかさや派手さが全く無い。都営新宿線車両の黄緑がたまにアクセントになっている程度だ。
 この窓から観察できる乗り物は地上走行物だけではない。時折、左上から右下に飛行機が降下していく。調布飛行場に着陸するものだろう。

 調布には飛行場がある。調布駅からは京王相模原線が分岐していて、多摩丘陵を横断して相模原市の橋本までを結んでいる。そして橋本には、中央リニア新幹線の新駅が誘致されるという。相模原線の輸送力を強化して延長し、リニア新幹線駅と飛行場を直結させてこの地域に新しい都市圏を創ることが出来たら面白いのに、という妄想がふと浮かぶ。
 第二新東京市は、三鷹ではなく調布に創っても良いのではとふと思った。この窓は西側に開いているので、方向としては調布市中心部を向いている。調布の冬の空に重くのしかかって全く動かない雲を眺めていると、しかし、調布だとブリガドーン現象に巻き込まれる恐れもあるなと考え直した。莫妄想。

 駅前のショッピングビル壁面の電光掲示板が見えるが「ココスクエアにようこそ」としか表示しない。ニュースのヘッドラインでも、株価情報でも何でも良いから、動的な情報を流してくれれば良いのに。そうすればこのファミレスのこの窓は、世界のモニターとしてより完璧なものとなっただろう。
 街を走る鉄道や自動車を俯瞰する時の、少年のようでもあり老人のようでもある愉快さと、電光掲示板上を駆け抜ける文字列を見る時に感じられる爽快さとは、少なくとも私にとっては、ほとんど変わらない性質のものである。線路上を走行する鉄道を読解や偏愛の対象にする時、人は鉄道オタクであり、掲示板上を通過していく電子文字列を美的鑑賞の対象にする時、人はメディアアートの理解者となっている。線路がスクリーンで、掲示板が交通基盤となる時間帯。車両がエクリチュール、文字はグラフィック。

 複数の動作主体(プレイヤー)が、ある時は他者に影響を及ぼしつつ、ある時は他とは無関係に、それぞれのルールに則ってそれぞれの速度で動き続ける。そんな風景をこの窓に向こうに、もうしばらくの間は見ることが出来る。この窓が一つのブラウザーで、動いているそれぞれの存在が、更新されていくタイムライン。京王線の地中化工事は今日も順調に進行している。さっきまで四羽の鴉が盛んに空中戦を戦っていたが、何時の間にか全て姿を消している。



鈍色の天へ鴉を逐う鴉

「窪田空穂歌集」より14

2012/03/24(土) 00:27:42 [引用▼日本]

はらはらと黄の冬ばらの崩れ去るかりそめならぬことの如くに

朝の電卓

2012/03/23(金) 17:24:47 [【11-12】夏と愛と]

向かいの座席に座っている作業服姿の壮年男性が
颯爽とスマホを使いこなしているなと思って見ていたら、
電卓だった。
早朝の京王線快速下り列車はどの駅にも止まってばかりの上に、
徐行続きでちっとも速くないと思っていたが、
世田谷区を出ると急に張り切って加速し始めた。

「窪田空穂歌集」より13

2012/03/23(金) 14:00:41 [引用▼日本]

奇獣モモンガ

中西悟堂君、その書斎に飼ふモモンガを携え来て示す


春寒の身にしむ昼を聞くがごと白単衣きて悟堂入り来る

拳大の奇獣モモンガひそみいて悟道の襟より躍りては出づ

黒曜の大き目二つ細き顎尾を負ふモモンガ悟堂の掌に乗る

桜餅の皮にすがりてモモンガはその小き口動かし止まず

モモンガは悟堂の袖より背にもぐりあたたかからむ再び出でず



中西悟堂は、日本のバードウォッチングの開祖。「野鳥」という造語を創案した人。

国領駅北口交番の老巡査

2012/03/23(金) 01:19:32 [【11-12】夏と愛と]

 いつもは詩のイベントで行くことが多いが、その朝はたまたま仕事で訪れた吉祥寺で、初めて入ってみた。仕事帰りに詩のイベントに向かう時に通った池袋北口でも目撃した。この二月だけで新店舗に遭遇するのは三度目になる。都内各所で爆発的に増殖が報告される新しい牛丼チェーン店、東京チカラめしが、京王線国領駅北側のタワーマンション下層階で内装工事をしている。現場付近では作業服姿の工員に混ざって、スーツ姿のホワイトカラーが何人か集まって何事かを打ち合わせている。聞くと、今週末には開店するという。
 駅からもう少し北に進むと、今度は佐世保バーガーの店がやはり工事中である。この街で何故佐世保バーガーなのか良く分からない。
 甲州街道と交差する角にある交番の高齢の巡査は人当たりが良く親切だ。おそらくは民事上のトラブルを持ち込んできたと思われる若い男性に対して丁寧に応対している。しばらくすると、その若者の紛争相手らしき壮年のブルーカラーの男性達もやってきて、その狭い交番の中で何事かを議論している。
 国領駅西側の踏切は、いわゆる開かずの踏切で、渡り切れなかった車が渋滞をなす。渋滞による混乱を防ぐために、警官達はオレンジ棒を振って勤勉に交通整理を行う。柴崎国領布田調布以東三駅間で現在進行中の、京王線の地下化工事が完了するまでの、もうしばらくの間はこんな光景が続くのだろう。



それぞれに再開発の夢を見てメルトダウンから遠く離れて



 午後になって、その巡査の姿を駅の南側の、マンション脇の道路の工事現場で見かけた。相談者の若者も一緒だった。



ささやかな進化を遂げつつある街で佇むことが仕事なのです。

「窪田空穂歌集」より12

2012/03/21(水) 13:02:34 [引用▼日本]

日ソ国交回復の日


戦わぬわが子捕虜とし死なしける忌々し彼や何する者ぞ

バイカルのうみべの子が墓生きの目に一目をと恋ひ骨かも得らる



ソ連に息子を殺された怒りの歌

【オープンマイク】OpenMic/wonder-words、Vol.5に参加して来ました【神楽坂】

2012/03/21(水) 02:47:42 [お知らせ・近況報告]

神楽坂のカフェ、キイトス茶房さんにて、2012.3.18に開催されたオープンマイクイベント、
OpenMic/wonder-words、Vol.5に参加して来ました。

今回は一人当たりの時間が比較的長かったので、
青条は『ちぃばす麻布ルート』より表題作の「ちぃばす麻布ルート」を読みました。
(この作品を人前で朗読するのはこれが初めてです。

また、二巡目の出番があったので、同書より、
春に関する作品を何篇か朗読してきました。

主催者の方々(服部剛さん/rabbitfighterさん/しえろ文威さん)と、
当日私の拙い作品を聴いて下さった方々に、改めて御礼を申し上げます。


OpenMic/wonder-wordsのブログ
http://wonderwords.seesaa.net/

キイトス茶房さんのサイト
http://kiitosryo.blog46.fc2.com/

「窪田空穂歌集」より11

2012/03/20(火) 23:48:20 [引用▼日本]

夏の月

夏の月のぼるがままに暗緑の空うるほひて光帯びつつ



これも佐藤佐太郎っぽい

詩人の波動

2012/03/20(火) 03:07:20 [【11-12】夏と愛と]

 直前にヒットラーが演説をふるったとしても、ビートルズが演奏を行ったとしても、僕は僕として、些かも動揺することなく、ただ淡々と自著の中から自作を朗読するだろう。またそうするべきだろう。そうして彼らの巧みな熱弁や躍動的な楽曲で最高潮に盛り上がっていた会場を、取り立てて変わったことなど最初から何も無かったような、平板で静穏で退屈な状態に戻してしまうだろう。それはバイキルトスクルトフバーハが重ねがけされた最終戦闘において、時折凍てつく波動を発動して全てを無効化する魔王の振舞にも似ているのだろう。
 この二月の中旬ぐらいからそんなことをしばらく考えていたが、それは純粋に個人的なイシューであって、この冬が例年にない厳しい寒さであったこととは直接には何の関係も無い。「全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、かくという行為で口に出すこと」が詩であると定義した、あの高名な老人が三月になって死んだこととも、直接にも間接にも何の関係も無い。

「窪田空穂歌集」より10

2012/03/19(月) 15:54:18 [引用▼日本]

この日頃電車のうちに見る人の表情すべてけはしくなりぬ

夏の月すずしく照れりわれは聞く云はぬこころの限りなき声

神楽坂さかの上にして見むものか空はるかなる護国寺の屋根

六月の低き緑のうへわたりすずしさ含む風動きくる

独立を報じてラヂオ鳴り渡れ首都東京に起る声なし



戦中~戦後の短歌。「六月の~」は何か佐藤佐太郎チック。

不味さの蘇生(ザオリク)

2012/03/17(土) 21:09:49 [詩文・俳文]

 一晩中激しく咳き込んで、眠れたのか眠れなかったのか自分でも良く分からないままに家を出る。
 白手袋の、おそらくはアルバイトか臨時職員かと思われる駅員に押されてねじ込まれたのは満員電車なのか棺桶なのか、今の自分は生きているのかいないのかすら良く分からなくなる。
 終点駅のエキナカの立ち食いソバの、人間性の根本を侮辱するほどに徹底した不味さに激しい怒りを覚え、殺意と共に自身が今ここに生きているという認識を強固な確信のもとに取り戻す。

「窪田空穂歌集」より9

2012/03/17(土) 01:37:17 [引用▼日本]

ガダルカナル

一万六千といふか悲しくもいきどほろしき戦をしぬ

たはやすく死なむ一人かわが健男一万六千七百といふか

わが胸をつまらしめては息させぬこの物とわれ共にあるべし

冬の表裏

2012/03/16(金) 23:48:42 [詩文・俳文]

 雪が降る真冬の屋外において、スーツにネクタイという姿で働く。
 スーツの内ポケットに入れたカイロが着実に効力を顕しはじめ、胸部から腹部までが暖められてくると、それまで意識しなかった背中の冷たさが俄かに感じられ、かえって寒さを覚える。

「窪田空穂歌集」より8

2012/03/16(金) 12:20:57 [引用▼日本]

蟋蟀

髯振りてひそかに入り来しまらう人よげに秋の夜の灯はなつかしき

ものいはぬこのまらう人の気やすさやいる忘れしに見れば髯振る

風○

2012/03/14(水) 21:52:01 [短歌]

風聖という言葉など無い故に
風邪は
風神よりも強敵

「窪田空穂詩歌集」より7

2012/03/14(水) 09:52:41 [引用▼日本]

岡の家に蒟蒻つくり八人の口すごす弥一兵に召されぬ

跡取を戦死せしめし年寄の健げなりしが俄に呆けぬ

雪にすら気づかない

2012/03/13(火) 18:07:41 [詩文・俳文]

 その北風の余りの冷たさに、雪にすら気づかない夜がある。
 自分自身も寒気の一部なのだと無理矢理思い込むことで、かろうじて路上に踏みとどまろうとする。
 ツイッターに指摘されてはじめて、今の月の美しさを知る。

「窪田空穂歌集」より6

2012/03/13(火) 12:06:05 [引用▼日本]

 

時事を見て

実際を重んずること極まりて情実の泥海とし拡がる

情実の泥海に喘ぎ指導者らその手は挙ぐれ指す所知らず

複雑の蒸し暑さ久しく日本人我らの素質堪へざらむとす

集団の大をなす時その持たむ理念はいよよ単純なるべし

形式は正に理論の現れなり理論と共に単純なるべき



昭和11年の歌

私は鮫になりたい

2012/03/13(火) 00:55:02 [自由詩]

私は鮫になりたい。
あらゆる言葉、あらゆるフレーズ、
あらゆる詩、自由詩、伝統詩、前衛詩、
短歌、俳句、その他諸々を
無差別に貪欲に、欲するままに食物としたい。
吸引し、咀嚼し、嚥下し、消化したい。
言葉の海をグイグイと遊泳して、
そこに在るものを全て自らの血肉としたい。

周囲の海域を血で染めながら、
ドンドン強く大きくなっていきたい。

(……内省や自己分析は虚無を産む、のだろうか?
そうではなく、内省や自己分析を放棄することが虚無なのだろうか?
わからない。
とにかく前進だ。
前進と食への意志を持つのだ。)

強靭な牙が欲しい。
時には余りにも硬すぎる言葉によって、
牙が欠けることもあるだろうが、
鮫の牙ならば直ぐに再生する。
そんな生命力が欲しい。

そうしてエネルギーに満ち溢れた強靭な肉体から、
兇暴で破壊的な言葉を次々に生み出したい。
大量に解き放ちたい。

表現の海の孤独な捕食者。
非情にして健啖な美食家。
そういう者に私はなりたい。

「窪田空穂歌集」より5

2012/03/11(日) 22:37:44 [引用▼日本]

山裾の桜が中に花よりもやや高く立つ反射炉の筒

反射炉のこの炉二つや幕末の我が日本の兵器廠なる

一人の太郎左衛門を国挙り頼みける日の遠くはあらぬ



江川太郎左衛門を歌った連作「韮山の反射炉」

鰐と冬雨

2012/03/09(金) 16:49:32 [【11-12】夏と愛と]

 人喰い鰐の夢から醒めたら雨が降っていた。
 ずいぶんと長い間発令され続けていた真冬の東京の乾燥注意報はここにおいてようやく解除された。

「窪田空穂歌集」より4

2012/03/09(金) 14:15:58 [引用▼日本]

門前の槻の木陰に、集う子等の騒ぎのやみ、豆腐屋のラッパの声の、近寄りて遠ざかり行けば、目白台わが住むあたり、ものの声殆どあらず、夏の夕の重き陰鬱、おもむろに漂いくる時、蜩のさやかなる声、身に近く俄かに起れり。鳴き継ぐ一つ蜩、澄みとおる声の刻みの、涼しさを滴らしくるか、鳴き継ぐ一つ蜩、涼しさを滴らしつつ、その空を広くもするか。目白台夏の夕べを、あるものはひとり鳴き継ぐ蜩の声。

三鷹の色彩

2012/03/09(金) 01:56:36 [詩文・俳文]

 三鷹駅の北半分は武蔵野市で、南半分は三鷹市だ。
 本当に駅構内の、跨線橋の中央にその境界はある。
 北口のペーパーラックには武蔵野市の広報がセットされ、南口のペーパーラックには三鷹市の広報がセットされている。
 北口のバスロータリーからは武蔵野市のコミュニティバス「ムーバス」が発着し、南口のバスロータリーからは三鷹市シティバスが発着する。三鷹市シティバスのうち、三鷹の森ジブリ美術館直通路線の車体には、特別なデザインを施されている。
 そうしてこの駅の南口にも北口にも、平等に花屋が在る。だからおそらくいずれ来る春もまた、北口と南口との双方を全く同時に、公平に、均等に彩るのだろう。



南北を均しく花群に挟まれて黄色と青とが赤を見送る

「窪田空穂歌集」より3

2012/03/07(水) 23:21:20 [引用▼日本]

神楽坂の夜店に買ひて、部屋に飼ふをさな鈴虫、共にいる三つの一つの、いち早く鳴きいだしては、つゆの雨さみしき夜を、声澄みて鳴きつづけしが、又の日は鳴かぬに見れば、籠ぬけて逃げ去りにけり、鳴ける鈴虫。



この作者の長歌は面白い。韻文の面白さみたいなものが良く発揮されていると思う。

「窪田空穂歌集」より2

2012/03/05(月) 14:21:12 [引用▼日本]

我をしも社となして、暮れより正月かけて、動かざる風邪の神。風邪の神はあまたあれども、この神はぐづぐづの、のろのろのいくぢなき神。時には背中寒からしめ、時には足節痛ましめ、大方は咳とのみなりて、熱のなき神。起こしもせず寝せもさせず、相手するに我れ飽き果てぬ。立ち去れ立ち去れ、去りて賜びたまへ、畏き風邪の神。

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