三鷹市の最深部、
中央自動車道の高架下にある
北野のバス停は、二系統のバスの始発地点となっている。一つは小田急バスの吉祥寺行き、もうひとつが今回乗る
関東バスの
荻窪行きだ。バスターミナルという程広くも無い、駐車スペースに
関東バスの車体が入ってくると、小太りの運転手が降りて来て、近くにある不衛生な公衆便所に向かう。予想はしていたがこの公衆便所はやはり、ほとんどバス会社の社員のためだけに存在しているもののようだ。周囲には他に誰も居ない。
夏の夜を定刻通り発車したバスには、私以外の乗客は誰も乗っていない。
荻窪行きなのに、バスは南東に向かって進んでいるようだ。進むに連れて、少しずつ乗客が増える。
給田というバス停で左折して進路を東に向け、すぐに京王本線
千歳烏山駅前に着く。
北野からここまでバス停にして五つぐらいだ。存外に近い。
私以外の乗客は全て降車し、新しい乗客が乗ってくる。
バスはそのまま東進し、同じく京王線の
蘆花公園駅に向かう。世田谷の幹線道路沿いの景観には、印象に残るものも特に無い。ただ進行方向左手に、かの有名なトマトラーメンの開祖、
アイバンラーメンの看板を目撃した時は気分がやや高揚する。時間を作って、一度食べに来なければなと思う。
再び左折して北を向いた所にある
蘆花公園駅前のバス停に停車する。時間調整のため、しばらく止まっているようだ。バス停の付近では中学生か高校生かがたむろして騒いでいる。
バス車内にある広報物を読んでみる。
関東バスでは「デジポンラリー」というスタンプラリーの企画を、この夏一杯やっているという。JR東日本の「ポケモンラリー」と似たようなもので、語感も意図的に似せたものだろう。「ゆるキャラ」にも似たいじましさが感じられるが、これで果たして何人の小学生が参加してくれるだろうか。
夜の車道を再び走り始める。世田谷区から杉並区へ何時入ったのか、区境には看板があったはずだが見逃した。今度は井の頭線の
高井戸駅前の高架下で、しばらく待機する。同じ井の頭線でも、永福町近辺は高架化されておらず、駅前は所謂「開かずの踏切」なのに対して、この駅は周辺の雰囲気にもずいぶんと余裕がある感じだ。四分ほど停車した後、発進する。
311号線、いわゆる環八を北に向かってしばらく走った後、右手の脇道に入る。乗客が増える。車窓には個人指導塾の城南コベッツ、ファミレスの華屋与兵衛。
飛ばすバス停が多くなる。車内放送で
荻窪一丁目の地名を聞いてから、
荻窪駅までなかなか辿りつかない。神田川は何時どこで渡ったのだろう? OKストアの看板が見えると、杉並・中野文化圏に入ってきたなと実感できる。やや渋滞気味だ。
終点の一つ前のバス停は東電
荻窪支社前である。駅南口に、西側から滑り込む。北口と異なり、いわゆるロータリーは無い。改めて降車客を見ると、ワイシャツ姿の人間が意外に多い。