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ポケモンがとうとう来ない島

2011/01/14(金) 05:45:19 [詩文・俳文]

 一番最初のポケモンの舞台は「カントー地方」である。横浜に該当する場所に港町があったり、房総半島のマザー牧場がモデルと思われるサファリパークがあったり、東京湾を横断する橋があったりと、幾つかの部分を見れば明らかに現実の関東地方をモデルにしていることが看取できる。続く二作目は「ジョウト地方」、これも明らかにモデルは関西・近畿圏で、京都の場所には(ポケモン世界における)古都があり、琵琶湖の場所にはやはり湖があったりする。三作目は主に九州、四作目は北海道と来て、さて今回の五作目は一体どこが舞台になるのだろう?  ……どこの島がモデルになるのだろう?
 
 明治期日本の、社会全般にわたる近代化プロジェクトの基幹を成した事業の一つとして、初等教育から高等教育までの、教育体制の整備が挙げられる。その中で、後発近代化国家日本を各分野において先導するトップエリートを育成する役割を担ったのが、帝国大学だ。東京帝国大学、東北、京都……と来て、北海道、九州の各地域に建学されたそれらのエリート大学は、敗戦に伴う教育改革を経た現在でも、旧帝と称される別格の国立大学として日本の学歴社会の頂点に君臨し続けている。無論、それにふさわしい実績と成果をそれらの大学は示している。今年のノーベル化学賞によって、九州大学以外の全ての大学からノーベル賞受賞者が一通り輩出されたことになり、その九大からは宇宙飛行士が既に誕生している。
 ……九州と北海道に帝国大学が出来たのだから、次はどこにできるのだろう? 
 ……どこの島にできるのだろう?
 ……次に帝国大学が出来たのは、朝鮮半島と台湾であった。
 ……帝国大学はとうとうその島にはできなかった。
 その島に住む人々の四分の一位は、悔しさの余りうどんを噛まずに飲み込んだ、かどうかはわからない。

 高度経済成長期日本の、列島全域を覆う開発・社会資本整備の根幹を成した事業の筆頭として、やはり高速鉄道網の整備を挙げなければならないだろう。その中で、世界の鉄道史にも例をみない、高規格の、専用軌道を持った長距離高速鉄道として企画されたのが、新幹線だ。東海道新幹線、山陽、東北……と来て、その敷設はこの春に九州の南端まで及び、また津軽海峡をくぐって北海道に至る路線が現在着々と建設されている。日本の交通史・技術史における最も輝かしい精華である新幹線のビジネスモデルとハイテクは諸外国からも非常に高く評価され、フランス、ドイツをはじめとする様々な追随者が後に続き、世界の交通網の在り方を大きく変えることともなった。
 ……九州と北海道に新幹線が走るのだから、次はどこを走るのだろう?
 ……どの島を走るのだろう?
 ……新幹線は台湾に輸出された。カリフォルニアやブラジルも現在交渉中である。
 ……新幹線はとうとうその島を走らなかった。これからも走ることは無いだろう。
 その島に住む人々の四分の一位は、怒りの余りうず潮にダイビングした、かどうかは知らない。

 低成長・安定期における日本は、観光やサブカルチャーなどのソフトビジネスを国を挙げて振興しなければならないと、少し前から指摘されて続けている。官僚にも民間企業にもその現状認識は見られ、海外にも情報を発信しようとそれぞれの現場において挑戦を行っている。その中で、世界にも例を見ない、日本独自の発展を遂げた分野として注目されているのが、テレビゲームだ。特に『ポケットモンスター』シリーズの世界展開、先進国における支持の高さ、収益は圧倒的であり、改めてここで説明する必要もないと思われる。
 ……九州と北海道がポケモンの舞台になったのだから、次はどこが舞台になるのだろう?
 ……どの島が舞台になるのだろう?

 ポケモンシリーズの第五作『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』の舞台は、島ではなく、何本かの川が流れる沿海部であった。その地図の形状から、これはニューヨーク近辺がモデルなのではないか、いや上海ではないかと、発売前から一部ネットでは議論になっていた。どうやら正解はニューヨークらしい。その名は「イッシュ地方」、世界には様々なバックグラウンドを持つ人間が居るけれど、人種や文化の相違にも関わらず、みな一種類の同じ人間ではないかというメッセージを製作者側は込めたとのことだ。なるほど、確かにニューヨークはそれに相応しく、また更なる世界展開を推進しようというポケモン(や任天堂)の経営理念にも適っている。

 ……ポケモンもついにその島には来なかった。これからも来ることはないだろう。
 その島に住む人々の、四分の一位は蜜柑を焼け食いした、かどうかは定かではない。
 
 他の全ての国や民族の歴史と同様に、この国の歴史にもまた栄光と汚辱の両面が刻まれているのだが、その栄光の部分から常にソフトに隔離され、疎外されている。ユーラシア大陸の東辺に隣接して北太平洋に浮かぶこの国の、世界に誇りうる、世界から注目され評価される成功体験から、またもや微妙に外されている。
 ああ、お遍路さんが今日もこの島を巡る。
 残りの四分の一の人々は、夕暮れの砂浜に佇んで太平洋の水平線を眺めていた。
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