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二子玉川ライズ

2011/08/21(日) 02:06:04 [【10-11】福島の向日葵に捧げる歌]

 城南の住宅地の地上を走行する東急大井町線の車窓は、宅地や街路との距離の近さがどこか長閑さを感じさせる。駅間距離の短い所などは、東急世田谷線などと雰囲気が似ているようにも感じられる。土地の起伏に合わせて切通しの谷底を暫く走った後に、高架線の上を右に左にカーブを描いて二子玉川駅に到着する。
 この駅の特徴として良く言及されるのが、多摩川上に突き出したその特異なプラットホームだ。その上を実際に、溝の口側の一番端まで歩いてみる。おばちゃんが一人いる。確かに川の上である。草が生い茂った中州に動く白い水鳥の姿などを眺めていると、渋谷方面から半蔵門線の車両が入って来て視界を塞いだ。

 二子玉川の駅前広場は、東急沿線のイメージにふさわしく、デザインに凝った豪奢な外観を誇っている。天井の高いところは隣駅の用賀などと共通だ。震災の直前ぐらいにこの駅前に登場した巨大商業施設、二子玉川ライズの建物のひとつに入る。タウンフロントという名称のこの建物のテナントは服飾品や化粧品が中心で、ショッピングセンターというよりは、デパートに近い。夏休みの時期ではあるが、平日の午前中なのでまだ人は多くない。エスカレーターの前方に、若いカップルの姿がある。降りたと思ったら、柱の陰で喧嘩を始めた。
 建物の上の方には書店兼文房具店が入っている。(ゴルフペンを置いていないか店員に聞いたらないとのことだった。)さらに上層フロアは飲食店街となっている。それに対して地下階は食料品店となっている。この構成はやはりデパート的だ。
 隣のリバーフロントという建物と連絡通路で繋がっている。こちらにはABCマートとか、ヴィレッジ・バンガードとか、H&Mとか、要するに現在の日本の商業地のどこにでもある店舗の姿がある。特筆すべき点は無い。
 これらの建物の南側には、バスターミナルを挟んでさらに広大な空地がある。いずれ何かが出来るのだろう。その空地のさらに南側には、既にタワーマンションが聳えている。そのマンションも、二子玉川ライズの一部であるらしい。
 向かう。途中で、この大規模開発計画に関する案内板がある。それ以前のこの土地の歴史については、何も触れられていない。真夏の平日のマンションの敷地内に、ほとんど人の姿がない。小雨が降ったり止んだりする中を、スーツ姿の男性が一人歩いている。
 マンションの敷地の外側の道路を大きく回ってこのエリアを一周する。苦行である。さらに南側に、小高い丘になった叢がある。角を曲って、マンションの西側に出て幹線道路沿いを歩いていくと、車道の向こう側に昔日の堤防らしき構造物が見える。更に進んでから道路を横断して近づいてみると、やはりそうであった。その堤防の切れ目の部分に陸閘の表示が残されていたから、かつてここにはゲートがあって洪水の際には閉鎖されていたのだろう。今はこの堤防を越えた多摩川寄りにも普通に住宅が建てられている。その住宅地に入っていくと、川の上空にはみ出した二子玉川駅のホームの様子が良く観察出来る。
 堤防の上に戯れに登ってみる。叢には放射性物質が残留しやすいと聞いたことを思い出した。すぐに降りる。暑くなってきた。日が高い。

 昼食時になると、商業地一帯は混み始める。老夫婦と、ベビーカーを曳いた若い主婦の姿が殊に多い。どこの住宅地にもある普通の風景。
 小学校高学年ぐらいの子供は、この街の一体どこにいるのだろうとふと思った。中学生や高校生ともなれば、別に電車に乗ってどこの街にでも遊びにいけるだろう。しかし小学生は、地元の駅前にもそれなりの居場所がないと面白くないのではないか? エリアの片隅の並びに、小さなプラモ屋を一軒見つけたきりで、おもちゃ屋らしいおもちゃ屋の姿もない。ガチャガチャの販売機が二、三個並んでいたり、UFOキャッチャーやワニ叩きのような無害な遊具が置かれていたりする、ささやかなゲームコーナーのような場所もない。通常のショッピングセンターと異なった高級志向を目指しているためか、フードコートもここには存在しない。
 ナムコワンダーエッグの記憶(ゲニウス・ロキ)は完全に抹消されている。そのホロコーストの徹底ぶりは、他民族を殺戮し絶滅させる、旧約聖書におけるユダヤ人の描写を思い出させる。もちろん、遡れば彼等自身もまた、洪水による絶滅を経験している。おそらくはこの場所もまた、幾度となく多摩川の氾濫に襲われて来たのだろう。あるいは周期的な掃討と断絶とが、この場所に棲む地霊や水霊の性格なのかも知れない。出現した清潔で巨大な伽藍とバザール。残されている小さな堤防。

 駅の反対側の、ドッグウッドという建物で、当然のようにユニクロを見つけた。
 だが、東急沿線のこの巨大商業施設で、不思議なことに東急ハンズを発見できなかった。

 広場に置かれた、白い船に風車を隙間なく突き立てた現代美術のオブジェの前で、どこかの大学のサークルがジャージ姿で集合している。それぞれに巨大な荷物を持っている。
 この風車は自然風のみで回っているという。

 午前に渡ったあの連絡通路の、一番高い橋から、もう一度南側を眺めてみようと思った。
 階段の端で、制服を着た小柄な、中学生と思われる少女が携帯電話で誰かと話していた。
 住宅地を抱えこんで世田谷の南に広がる緑の丘と、夏の午後の青空に縦長に伸びゆく雄大積雲と、タワーマンションの直線が成す色彩と構成との絵画的な美しさは、認めざるを得なかった。 
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Comment

お早うございます
昔 ボクが居た頃と(二子玉川ではないのですが)

ずいぶん趣がかわってしまってるのですね

いつもご訪問ありがとうございます
こんばんわ
いちごはニガテさん、こんばんわ
コメントありがとうございます。

私は、二子玉川については全く詳しくなく、
旅行記のような感じでこの文は書きました。
再開発で大分変ったようですね。

こちらこそご訪問ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。

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