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『井上靖全詩集』より「曉闇」

2012/09/14(金) 13:56:15 [引用▼日本]

一日のうちで、この時刻だけ海は死んでいる。海の死骸を見るために、夜露の雫が落ちている赤松の林をぬけて行く。足もとはまだ暗い。寝みだれた浜木綿の株の根もとに立つ。あわただしく息を引き取った浜へ降りて行く。小屋がけのヨシズはめくれあがり、ボートは飛び散っている。その向こうに青黒い海が大きな身を横たえている。水平線のあたりに微かに明方の光が走り、完全に息絶えた海を包んでいる。渚に打ち揚げられた貝と海草を踏んで行く。渚もまた死んでいる。一日のうちで、暁闇の立ちこめているこの時刻だけ海は死んでいる。

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