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アキバの白人ストリートミュージシャン

2013/02/23(土) 22:35:17 [【12-13】オレンジをアップデート]

 前世紀の終りにはまだ、秋葉原の夜は、早くて暗かった。電気街口には、酒場らしき店など何もなかった。午後八時にはほとんど全ての店がシャッターを降ろしてしまうので、ただ足早に立ち去るだけの街だった。
 十年ぐらい前からの一連の再開発で様変わりして、駅周辺には多くの飲食店が軒を連ねるようになった。大いに賑うその夜の喧騒の片隅で、一人のストリートミュージシャンを見かけた。アトレの北側、飲食店ビルとの間の歩道で、アコースティックギターを奏でる白人男性である。
 痩身で、声もまた細い。十二月の寒風によってその唄はかき消されてしまい、何を歌っているのかわからない。尤も、それが聞こえたとしても、英語かその他の外国語であるのだとしたら、やっぱり私にはよくわからないのだろうが。(何だかボブ・ディランブルース・スプリングスティーンのようだとも思ったが、それは要するに、私には洋楽史の基礎知識が根本的に欠落しているので、「アコギを弾く白人男性ミュージシャン」のサンプルがその二者しか無いということに過ぎないことを示しているに過ぎない。)
 外人、特に白人には非常に珍しいことに、彼のパフォーマンスからは自己顕示がほとんど感じられない。にもかかわらず彼の存在からは、明らかに空間を変える力を感じた。
 現在のアキハバラは過剰なまでに物語性と意味性を付与されている空間だ。オタクの街、萌え文化の街、ITの街、無差別殺人の街、AKBの街……。この街に投影された諸々のコンプレックスと自尊心とを無効化し、中和し、解除する、どこか修道僧的な禁欲と献身との力が、その決して力強いとは言えない演奏から放射されている。例えるならば、新橋辺りと同質の中立的な空間、普通のターミナル駅のくたびれた街角に、その周囲を変えてしまうような。
 彼が路上に置いた帽子には、まだ余り金が入っていない。そこに幾許かの小銭を付け加えて、この街では夕食を食べずに立ち去った。

アキバの白人ストリートミュージシャン02

アキバの白人ストリートミュージシャン01
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