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南北バスすぎ丸 浜田山→阿佐ヶ谷

2013/10/13(日) 04:31:36 [【12-13】オレンジをアップデート]

 今日は休日なので、浜田山駅前発阿佐ヶ谷駅行きのすぎ丸バスの最終便は、バス停の時刻表によると19時00分発である。街角に見えるブックオフの看板に少し心魅かれつつも、そのバスに私は乗らなければならない。夕立が上がった後の七月の空はまだまだ明るくて、浜田山の駅前も人通りが多い。
 18時47分、バスが来る。地元の人間らしき老婆が、「鎌倉街道沿いを通る阿佐ヶ谷永福町行き」のバスの有無について、運転手に問い合わせている。このバスは平日と休日でダイヤが違い、また便によっては少し経路も違っているようだ。
 さっきまで乗っていた、下高井戸発浜田山駅南行きのすぎ丸バスと比較すると、このバスの車体は、さらに一回り小さい。座席はほぼロングシートばかりである。老人の姿が多い。定刻に出発した。
 ブックオフの角を右折して、北へ向かう。しばらくは、誰も乗り降りしない狭い道のバス停を、淡々と通過し続ける。人見街道という、一応車道らしき車道に出ても、それは変わらない。冷房が強い。それが体に堪えるのか、さっきの老婆が後部座席を頻繁に左右に移動している。
 左に曲がって、浜田山小学校でようやく、別の老婆が降りた。住宅街やマンションの植込みが視界に迫ってくる。児童交通公園で一人乗る。件の老婆が降りる。
 善福寺川緑地を通る。本当にただの住宅街だ。逆方向、阿佐ヶ谷発のすぎ丸バスとすれ違う。こちらと異なり、向こうの車内にはそれなりに人が乗っているようだった。
 一転して団地エリア、阿佐ヶ谷住宅の一帯に入る。まるでゴーストタウンのような、荒廃しきった景観である。廃屋らしき団地の敷地を囲い込む、解体工事用の白い壁が冷たさと淋しさとを強調する。得体のしれないカーブをグルリと回る。街路樹等の手入れも適切になされていないのだろう、妖しく伸びた木の枝が思い切り音を立ててバスの屋根を擦る。
 ここが今回のワープゾーンだと思った。京王線沿線のどこかから、中央線沿線のどこかに路線バスで北上する時は、いつもこうだ。必ずどこか、こういう次元の狭間のような空間を一度は通過する。永福町から高円寺に向かった時も、芦花公園から高井戸を経由して荻窪に向かった時も、そうだった。浜田山から阿佐ヶ谷へ向かう今回も、やはりそうであった。
 杉並区役所前を右折して中杉通りに入った時点で、乗客は三人しか居ない。始発から終点まで、このバスの乗客が六人を超えることは一度もなかった。終点の二つ手前、阿佐ヶ谷南一丁目で、さらに一人降り、最後まで乗っていたのは、私ともう一人の男性だけであった。
 ロータリーに入っていくバスの窓から、阿佐ヶ谷駅南口のディラ前の路上を見る。私にとっては見慣れた風景だが、この角度、この高さから望むのは始めてだ。今日のその場所には、路上詩人は居ない。ドッペルゲンガーなど居ない。
 浜田山駅方面へ向かう折り返しの終バスは19時30分で、この便に限っては浜田山を通って、永福町まで行くのだった。それなりに人が乗り込んでいた。
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