アトレヴィ大塚のスタバの窓際

2016/08/24(水) 01:05:32 [エッセイ]

 日本の都市において、駅前の空間はバスターミナルやタクシープールとなっているのが通常だが、大塚駅の南側はそうではない。東池袋の台地側から下ってくる都電荒川線の軌道が最優先され、バスの発着場は幹線道路を隔てた北側に追いやられている。
 その、大塚駅の、山の手線の内側には、数年前に駅ビルが出来た。アトレヴィ大塚である。隣の巣鴨駅に既にあったものと、大同小異の商業ビルだ。個々の街の地域性や特性を剥奪し、風景も消費行動も均質化、パターン化していくその企業戦略は、ソフトな全体主義の一種ではないかと、建設途中のそのビルを見て感じていた。完成した今となっては、これはジャンクスペース(現代建築家のレム・コールハースがその著作において提出した概念)の具現化ではないかと考えている。
 ユニクロがあり、ロフトがあり、ドラッグストアがある。スーパーは勿論、成城石井。上層階には和洋中の各種飲食店が入っているが、二階にはスタバが入っている。
 二〇一〇年代の日本の主要都市においては、スタバなど面白くも何ともない。
 そのスタバの、窓際の角の座席から、駅前を眺める。
 早稲田側から来た都電の車両が駅前を徐行し、直角に曲がってJRの高架下に入って行く。高架下の停留所、大塚駅前で停車する。タイミングが合えば、王子側から来た車両とのすれ違いや、高架上を走る山手線との立体交差も目撃出来る。
 実に良い。
 荒川線の車体は、それぞれに異なるデザインで塗装されている。長期に渡った石原都政以降のことであろうが、広告物でラッピングされたものも少なくない。色彩豊かで、バリエーションが多種多様で、見ていて飽きない。その風景が余りにも楽しすぎて、予定していた書き物や読書がほとんど進まない。
 日本上陸のその当初から、スタバには良い印象を持っていない。全てが割高にもかかわらず、フードメニューが貧相な、使いにくい喫茶店というぐらいの評価しかしていない。
 けれども、この風景のためだけに、このスタバはこの場所に存在していても良いと思った。走行する都電の姿を俯瞰するためだけに、この店に通っても良いと思った。
 何時までもこうしていたいが、時間になる。ビルを出て、都電の軌道を渡る。街はまだ明るい。夏は始まったばかりだ。
 
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